はじめての訪問2
スペクタクルの“ない”世界
ネパール滞在4日目、ようやく学校のあるコタンへ
ちょうどカトマンズに来ていたコタンの人たちと通訳のサビタと一緒に、チャーターした運転手付きのジープに乗り込む
荷物は車の上にぐるぐる巻きにしていざ出発
ネパールの人の運転って、まるで自殺行為みたいだ
恐ろしいくらいのスピードを出しながら、常に前の車を追い越そうとするので
しょっちゅう正面衝突ギリギリ
急カーブの山道を蛇行しながらひたすら走る
途中、がけ崩れでなんとジープが進めない状況に
諦めかけていると、やたらワイルドなジープの運転手が「オレ様ならこっちから行けるぜー!」と方向転換して山道に突入
普段は車なんて通らない場所らしく、宇宙人でも見ているかのような眼差しで住民たちに見つめられながら、道なき道を少しずつ前進していく
車が壊れるんじゃないかと思うくらい揺られながら、だんだん面白くなって笑いがこみ上げて来た頃、運転手が
「こんな道、動物でも通らないのに車が通ってる。すごいね!」
とポツリとつぶやき、全員爆笑
2時間かけてなんとか山を越え、ようやく普通の道に出ることができたものの、今度は大きな川を渡るためにジープを乗り換えるとか
大きな荷物を背負って細いつり橋をそろそろ渡る
その後も数時間つづくネパリロード
空全体がオレンジに色づいて迫力を増すと、急に目に映る世界がとてつもなく広いものに感じてくる
壮大なこの風景も世界地図で見たら針の先よりも小さな大きさだなんて
人間って、なんと小さいことか
そして
点よりも小さなこの場所にたまたま居合わせ、こんなにも胸がいっぱいになっているこの瞬間が存在すること
これは写真には絶対に写せない
都会で見る夕焼けはあっという間なのに、
この時は随分長い時間、オレンジ色の空を見ていたように感じる
やっとコタンに到着した頃には、すっかり頭の上は満天の星空
ここから約2時間の山下りのはずが、夜道になってしまったのでバイクのお兄さんが送ってくれるらしい
いくつかの荷物と一緒にぐるぐる巻きに固定されて、ネパリロードを今度はバイクで山下り
バイクのライトと星しか見えない山道を落ちないように必死につかまりながら、恐る恐る上を見上げると、手が届きそうな星空
人生っていつ終わるか分からない
それを、ネガティブではないカタチで当たり前のこととして受け止めた、
スペクタクル(作られた見世物)のない世界
これが私の、はじめてのコタンの印象でした。
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>>第5回「タナカ」