What is education
生きることを学ぶということ
マダンさんは、以前国連で働いていた。
色んな国で仕事をするうちに、自国を変えなければいけないと思うようになる。
そのために必要なのは、教育。
彼は国連を辞めて、幾つかの国の大学でPhDを取得し、ネパールに大人向けの専門学校を作った。
ITやファッションやアグリカルチャーの技術や知識を教える学校。
しかし、そこで学んだ大人たちのほとんどが海外へ行くか、知識を活かせないまま終わってしまう。
マダンさんは考えた。
どうやったら、国を変えられるような人を育てることができるだろう?
彼は小さな子どもから育てることにした。
時間がかかったとしても、まだ透明な心と頭に正しい教えを与えるべきだと。
小学校から大学までの全ての教科書を読み漁り、様々な教育方法を学び、考えた。
教育とは何か?
そして、それを形にしたのがこのディクティルの学校。
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この学校で学ぶべき大切なことは10個に絞られている。
ー例えば、こういうこと。
<言葉>
座学はベースにあるものの、書くことや読むこと、伝えることを学ぶために、日記を書き、それを発表する。
そして、映画からも学ぶ。夕ご飯をみんなで食べた後はみんなで映画鑑賞が始まる。
(私の訪問時に観ていた映画はセリフのないチャップリンのモノクロ映画で、それを観て子どもたちが爆笑していたけど!)
<自然>
世界は、太陽・水・宇宙・土・空気の5つの要素から成り立っていることを学ぶ。
そこには、バイオロジー・フィジックス・ケミストリーが含まれる。
これらを知識としてだけではなく、体験として身体で学ぶために、彼らは農業を基本の学びとする。
農業は自然から与えられる恵そのものだから。
<食べもの>
人にとって食べることは一番重要!
作物を作ること、家畜を育てること、料理(サーブも含めて)。
全て子どもたちが自分達で大人にサポートされながらやっている。
学ぶということは生きる術を学ぶことであり、
学校の中の全て、生活の全てが彼らの学びの場。
そして、年上の子どもは年下の子どもたちに教えることが、更に学びとなる。
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ここにいる子どもたちの多くは、マダンさんがネパール国内の色んな場所を訪れて出会った”このままではまともな教育が受けるチャンスがない子どもたち”だという。
学校ができてすでに十数年が経ち、ここで育った子どもたちが今では先生として子どもを導いている。
よく、歴史上の人物が活躍していた歳を聞くと、若くてびっくりすることがあるけど、ここの先生たちはまさにそんな感じ。
この人がそばにいれば何か問題が起きてもきっと大丈夫だ、と思える逞しさを感じる。
点数を取るための教育ではなく、自分で人生を切り開ける力を身につけること。
ここで彼らが学んでいるのは、まさにそういうこと。
「Life is Survive」
マダンさんの話を聞いていると、くっきりと切り取られたみたいにその言葉が耳に残った。
自分で道なき道を切り開いて来た人だけにしか出せない、力強い、深い響きだった。
「朝起きると、美しい世界があって、大切な人たちがそばで笑っている。これ以上に幸せなことがあるだろうか?それが私の目指す世界。」
その世界がまさにこの学校だった。
きっと、この世界で育った子どもたちは、その素晴らしい世界を更に広げてくれると思う。
広げて欲しい。
切実な気持ちで、そう思う。
同時に、心の中に疑問がプツプツと生まれてくる。
私が今まで無意識に価値だと思っていたものは、本当にそうだろうか?
自分にとって大切なことが明確で、それを人生の中心にドカンと据えている人たちが、一体どれくらいいるだろう?
教育とは何だろう?
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>>第5回「タナカ」